ぐるぐる回る「めまい」

周囲のものがグルグル回って見えるような「めまい」や、自分がグルグル回っているような感じがするような「めまい」は、回転性めまいと呼ばれます。
耳の奥にあたる頭の骨の中には、内耳といって聴覚と平衡感覚の感覚器がありますが、平衡感覚を司る器官は前庭(ぜんてい)と呼ばれ、体に対する重力の向きや、体の回転を感じ取っています。
この前庭のおかげで、私たちは真っ暗闇にいても、自分の体がまっすぐに立っているのか、逆立ちしているのか、斜めに傾いているのか、あるいはぐるぐる回転しているのかを知ることができ、それらの感覚情報に基づいて体の平衡を保つことができます。
この前庭に何か異常が生じると、実際には起こっていないような体の向きの変化や回転を示す感覚情報が作られてしまい、周囲のものが回って見えたり、自分の体がグルグル回ったりするような回転性「めまい」が生じます。
また、回転性ではなく、体がグラグラ揺れるような「めまい」が生じることもあります。
このような「めまい」を起こす病気としては、内耳の病気が多く、しばしば耳鳴りや聴力低下といった聴覚の障害を伴っていますが、前庭だけがおかされて、聴力の障害は全くないこともあります。
その中でも多いのは「良性発作性頭位性めまい」といって、じっとしているときは何でもありませんが、体をおこしたり、寝返りをしたり、後ろを振り返ったりして頭を動かしたとたんに、グルグルと回り出すようなものがあります。
これは耳鼻科の病気ですが、同じように、頭を動かすとグルグルくるというような回転性「めまい」は、小脳や脳幹におこった脳出血や脳梗塞でも生じます。
椎骨脳底動脈循環不全といって、首の骨の中を通って、小脳や脳幹といった脳の後ろの部分を養っている椎骨動脈、あるいは左右の椎骨動脈が合体して脳幹や小脳を養う脳底動脈などが細くなっていたり、頸椎椎間板ヘルニアでこの動脈が押されていたりしても、回転性「めまい」を生じます。
また、片頭痛発作の前兆として強い回転性めまいを生じることも少なくありません。
ですから、聴力障害のない回転性めまいが起こったら、耳鼻科だけでなく神経内科を受診されることをおすすめします。

岩田 誠