パーキンソン症候群とは?

パーキンソン病とよく似てはいても、これとは違う病気と考えられるものは、まとめて症候性パーキンソニズムと言われますが、日本ではパーキンソン症候群と呼ばれています。これは、特定疾患(神経難病)の医療費負担制度の中で、そう呼ぶと規定されているからです。症候性パーキンソニズムの中には、家族性パーキンソニズムと呼ばれる、遺伝子異常によるものがあります。日本で多いのは、常染色体劣性遺伝により、親子には伝わらず、兄弟姉妹に発症するもので、20歳台といった若い時に発症することが多いタイプです。症候性パーキンソニズムで多いものに、薬剤性パーキンソニズムがあります。精神病で使われる抗精神病薬で生じることが多いですが、抗うつ薬や胃潰瘍予防薬、吐き気止めなどでも、長期にわたって連用すると生じてくることがあります。ですから、パーキンソン病を疑って受診される際には、お薬手帖を持参されて、服薬しておられるお薬がはっきりとわかるようして下さい。多発性脳梗塞や、正常圧水頭症でも、一見パーキンソニズム様の症状がみられることがありますが、慣れた神経内科医が診察すれば、パーキンソニズムとは違うことがわかります。

症候性パーキンソニズムの中には、特定疾患(神経難病)に指定されている病気があります。多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、レウィ小体病、大脳皮質基底核変性症などがそれです。これらの病気は、進行すればパーキンソン病ではないことがはっきりしますが、発症初期段階では、パーキンソン病と区別することが困難なこともあります。このような場合には、画像診断が有用です。これらの病気とパーキンソン病を鑑別するための画像診断としては、頭部MRI検査、DAT(ダット)スキャン、MIBG(エムアイビージー)心筋シンチグラム、脳血流SPECT(スペクト)などといった検査法がありますが、どの検査も高額な検査料金がかかりますし、パーキンソン病の診断を確定するためにこれらの検査をする必要は必ずしもありません。いずれの病気であったとしても、パーキンソニズムに対する治療はほとんど同じですので、後に述べますような抗パーキンソン病薬による治療を始めてみて、治療効果が不十分であるとか、あるいは副作用が激しすぎるといった状態が生じた時のみ、改めて診断確定の検査計画を立てる方が、合理的な診療戦略なのではないかと思われます。

岩田 誠